感情は敵?味方?
皆さんは感情についてどのようなイメージをお持ちでしょうか?
「イライラをなんとかしたい」、「怒りをコントロールしたい」、「人前で涙は見せられない」 など、どこか感情は現代社会において不都合な厄介者として扱われることも多いのではな いでしょうか?
とりわけ、現代社会においては多忙さや効率を求めることからこういった傾向はより一層 強くなっているように感じます。
一方で、コロナ禍において世界全体がスローダウンした中で、なんとも言えない鬱積感や不 安感、孤独感を感じた方も多いのではないでしょうか?普段は目を向けなかった感情に直 面し、戸惑いを感じた方もいらっしゃったのではないかと思います。
このように感情はネガティブなイメージを持たれることも多いですが、実は人間にとって 感情は社会や環境に適応していくための本能的かつ大切な役割があります。 例えば、怒りは権利や境界線が侵害された時に自分を守り、自己主張や自己効力感を高める ような役割があります。悲しみは一度立ち止まったり誰かの助けを得たりすることで、傷つ きを癒すような役割があります。
また、感情は論理的ではないと誤解されがちですが、実は判断や行動の指針を与えてくれる ものでもあります。イライラやモヤモヤなど漠然とした感覚もしっかりと感情に触れてい くことで、「自分はこうしたかったんだ」、「自分はこれに傷ついていたんだ」と、はっきり と筋の通った明確な感覚として腑に落ちていくことがあります。
つまり、感情は上手に扱っていくことで、人が社会や環境で生きていく上で、とても役立ち、 心強い味方になってくれるものと言えるでしょう。
感情表現ができない、感情に振り回されてしまう理由
ところで、実際にカウンセリングにいらっしゃる方の中には感情に関する悩みを抱えてい る方はとても多くいます。
感情を抑えすぎてしまい自分のことがわからなくなってしまったり心身に無理が生じたり する、感情に圧倒されてしまい一人で感情を抱えることが難しくなってしまう、また感情に 振り回されてしまい人間関係が難しくなってしまうなど、まさに人が社会で生きていく上 での根本的な悩みとなるものです。
そして、こういった感情に関する悩み、つまり、感情を表現できない、感じられない、コン トロールできないということの背景には、感情そのものを恐れたり、または感情を表現する ことを恐れたりすることなどが原因となっていることが多いのです。 それらの恐怖から感情を回避したり圧倒されてしまったりすることで、どんどん感情から
遠ざかってしまい、感情を自分のものとして扱うことが難しくなってしまいます。 人生の中で生き生きと生活している実感や安心感をもつことが難しくなってしまうことも あるかもしれません。
例えば、育ってきた家庭や社会などの環境において、自分の気持ちや感情が共感されなかっ たり肯定されなかったり、また時には否定や拒絶をされたりすると、感情を感じることや表 現することが怖くなってしまうことが多いのです。
カウンセリングで感情を大切にしていく意味
カウンセリングで感情を大切にしていくことには意味があります。普段の生活では、感情に 目を向けるのが怖い、感情は拒絶されてしまう、忙しくてそんな暇はない、と感情を大切に 扱うことは難しいかもしれません。
ですが、カウンセリングという社会とは少し切り離された特別な空間や時間の中で、またカ ウンセラーとの安心できる関係性の中で、少し足を止め、ゆっくりと自分の感情に触れてい くこと、ちゃんと自分の感情に居場所と時間を与えてあげることで、自分らしさという感覚 や社会との適応的なつながりを取り戻していけるのです。
感情についてお悩みの方は、ぜひ一度カウンセリングにいらしてみてください。カウンセラ ーも一緒になって取り組んでいけたらと思います。
文責:カウンセラー山岸