![感情のコントロール](https://skyleaf-counseling.com/wp-content/uploads/2024/03/ネガティブ感情の写真.jpg)
感情のコントロールは可能?
「感情を上手くコントロールして、毎日気分良く過ごしたい!」
「ネガティブな感情を早く消したい!」
・・・私達は皆、日々の気分の波に振り回されながら、そう願って過ごしているのではないでしょうか?
でも、本当にそんな事が出来るのでしょうか?
結果から言うと、「感情のコントロールはある程度、可能」です。
ネガティブな感情を完全にゼロにする事はできませんが(というか、そうすると生きていく上でむしろ不利になってしまう)、ふだんの日常生活が辛くならない程度まで感情をコントロールする事はできます。
そしてそのためにはまず、感情がどうやって出来ているのかを理解することが重要です。そうすると、これから提案する方法も「なるほど!」と説得力が増して、取り入れやすくなります。
感情はもともと、体の感覚から作られる
感情はどこから来ているのかと言うと、interoception(インターオセプション)という、”身体の感覚”から来ています。それは例えば、胃が痛いとか、気持ち悪い感じがするとか、身体がピリピリするとか、ソワソワするとかいう、身体の内側から自然に出て来て、私たちが日々無意識に感じ取っている感覚です。その身体の感覚の情報を脳が分析し、「感情」として認識するのです。
例えば、ミーティングの場などで人前でスピーチをしなくてはいけない時に、心臓がドキドキし、手に汗をかいたり、神経が過敏になって落ち着かない状態になるとします。この状態を脳が分析し、「緊張している」という感情として判断する、これが感情ができる大まかな流れです。
感情は脳によって作り上げられたフィクション?
ここでポイントになるのは、「感情」というのが最初から存在していた訳ではなく、あくまで「脳がそう判断した結果」に過ぎないという事です。先ほどの例で言うと、心臓がドキドキしたり、手に汗をかいたりという身体の症状が存在した事はまぎれもない事実なのですが、それを「緊張している」という感情だと決定したのは脳のしわざであって、最初から「緊張という感情」が存在していた訳ではないのです。
ですから、例えば人によっては、同じように心臓がドキドキして手に汗をかく、という状態を「緊張している」というストレスフルな感情ではなく「興奮(期待)している」というポジティブな感情に解釈する人もいます。このポジティブな解釈は、アスリートなどが本番前に大きなプレッシャーを感じた時に意識的に使って、競技のパフォーマンスを最大限に発揮する方法です。
もともと感情というものは存在しない
この「どの感情が生まれるかは、脳が身体の症状をどう解釈するかによって違ってくる」という理論は、近年様々な研究結果によって明らかになってきているのですが、実は心理学の歴史上では長い間、知られていなかった事なのです。
これまで心理学者の間では、「感情という確固たるものが私たちの内側に最初から存在する」という説を信じてきました。例えば、「不安」とか「うつ」とか「ワクワク」とか「怒り」といった感情を司る部位が私たちの脳に元々あって、それが出来事に反応して出てくるだけだと思われていたのです。しかし、この「感情というものが脳に元々存在する」という仮説を証明するべく、多くの研究が行われましたが、結局は脳のどこにも特定の感情を司る部位というのは発見できなかったのです。
その結果、現在の「感情は元々存在していた訳ではなく、脳が身体の状態を解釈した結果、作り上げたもの」という説が有力になってきています。
感情は変えられる
この脳による解釈の仕方に絶対的なやり方というのはなく、まちまちなもののようです。
どうりで、同じ出来事が起こっても、人によって感情の反応の仕方が違う訳ですよね(相手のちょっとしたミスに怒りだす人もいれば、笑って済ませられる人もいる)。
そしてもし感情が、脳によって勝手に作り上げられたものだとしたら、解釈の仕方によって感情を変える事も可能だという事になります。
「解釈の仕方を変える」と言われると、
「よくある、物事をポジティブにとらえろっていう話でしょ?そんなの分かってますよー!」
と思われるかも知れませんが、ここで解説するのは、もう少し実践的な方法です。
次の記事では、この「脳の解釈の変え方」を説明していきます。
出典:How Emotions Are Made:The Secret Life of the Brain written by Lisa Feldman Barrett