先ほど、感情を変える(コントロールする)事は可能だと言いましたが、
これは感情が「元々あったもの」という訳ではなくて、「脳が作り上げたもの」だからです。
例えば、あなたが上司に仕事のミスをきつく指摘されたとします。
その時に、まず体の症状として出ます。心臓がドキドキしたり、胃のあたりがムカムカしたり、汗をかいたり、体の中ではアドレナリンが放出されているかも知れません。
この体の症状を、脳が「これは怒りだ」と解釈して初めて、「怒り」という感情になるのです。
ただ、この解釈の仕方は、人によって違います。怒りではなく、「怖い」と解釈する人もいれば、「ストレスだ」と解釈する人もいます。
(さすがに、この状況を「リラックスしている」とか「幸せだ」と解釈する人はいないと思いますが。)
感情をコントロールするポイントは「言葉」
この「脳による解釈」という作業は、私たちが子供の時に「怒り」「怖い」「ストレス」という言葉を学習して、初めて起こります。
という事は、こういった言葉をまだ知らない赤ちゃんは、脳による解釈の作業ができないので、つまり感情がないという事になるのでしょうか?
・・・その通り。
言葉を知らなければ、「感情」という形にはなっていません。ただ心臓がドキドキして、汗をかいて、アドレナリンが分泌される、という体の症状があるだけです。そこで話は終わりなのです。
つまり、感情を感じられるかどうか、そしてどんな感情を作り出すかは、私達の使っている「言葉」にかかってきます。
ですから、この「言葉」をうまく使えば、感情を変えていくことも可能なのです。
感情をあらわす「言葉」をできるだけ使うようにすること
では、この「言葉」を使って感情をコントロールするためには、まず感情を表す「言葉」をなるべく日常で使うようにすると良いです。
知っていると、気持ちが少し落ち着くという効果があります。
なぜ、感情をあらわす「言葉」を当てはめると、気持ちがコントロールしやすくなるのでしょうか?
それは、私たち人間が、なぜ他の動物にはない「言葉」という能力を身につけていったのかという事を考えると分かります。
人間は、「言葉」を使う事によって、起きている事を理解して整理し、対処方法を考えたり、他者とスムーズにコミュニケーションを取ったりという、生きていく上で大きな武器を手に入れたのです。
ですから、言葉を使うことで、状況をコントロールしやすくなり、本能的に安心感のようなものが感じられるのでしょう。
感情表現できないと、心と体の問題が起こる
「失感情症」という障害があるのですが、「感情が失われる」という言葉の通り、自分の感情が感じられなくなっている状態の事です。心臓がドキドキしたり、汗をかいたり、という体の症状はあり、その事には気付いているのです、それを「怒り」「怖い」というふうに感情として認識できないのです。
そのせいでストレスを感じやすくなり、頭痛や過呼吸、不眠、手足が麻痺したりなどの身体の異常が出てきます。
そこまで行かないにしても、怒りが爆発しやすくなったり、うつ傾向になったり、人と上手くコミュニケーションが取れなくなるなど、色々な心身の不具合につながるのです。
つまり、私たちはふだん全く意識していないのですが、感情を言葉で表現する事は、心身をコントロールする上で、とても大事なことなのです。
基本のトレーニング:感情を、日常的に書いてみる
そのため、なるべく気持ちが高ぶったらまず「これはどんな感情なのか?」と考えて、「悲しい」「びっくりした」「怖かった」「モヤモヤする」「イライラした」等の感情を表す言葉を当てはめる事だけでも、少し気持ちが落ち着くことでしょう。
これは、自分でその時に感じた感情を言葉にしてみるだけでも良いのですが、日記や簡単な記録という形で、書き留めるとより効果が高いようです。また、可能なら誰かに伝える事ができれば、さらに良いと思われます。
これをやる事で、100%の感情が思い通りにコントロールできるようになる、という事ではありませんが、基本のスキルが少しずつアップしていくはずです。
野球で言うと、素振りを練習したり、ランニングのようなものでしょうか。ただ、素振りやランニングを全くやらないで、野球が上手くなることはありませんからね(^^)
良ければ早速、試してみて下さいね!
次は、言葉での感情表現をさらに豊かにすることで、感情コントロールがもっとレベルアップする方法を説明します!
出典:How Emotions Are Made:The Secret Life of the Brain written by Lisa Feldman Barrett